大腸ポリープの治療について/Cold Snare Polypectomy;CSP
内視鏡を肛門から入れて、直腸から盲腸までの大腸全体を詳細に調べます。ポリープなどの異常所見があれば、必要に応じてその組織の一部を採取して、良性か悪性かなどの病理検査(顕微鏡による検査)をすることもできます。また、状況にもよりますが、その場でポリープを切除することも可能です。
当院では、すべての検査・治療を日本消化器内視鏡学会認定の内視鏡専門医が行っていますので、少ない苦痛で安心して検査を受けていただくことができます。大腸腺腫発見率も70%を超えており、見落としの少ない質の高い検査を実施しております。
大腸ポリープの治療について
大腸腫瘍、大腸ポリープの内視鏡治療として、主な方法は以下の3種類あります。ちなみに「ポリープ」とは、本来、「出っ張っているもの」という意味で、良性とか悪性とかの評価は含まれません。
スネアの一例
写真はオリンパス社製の
「SnareMaster Plus」
①コールドスネアポリペクトミー(Cold Snare Polypectomy:CSP)
大腸ポリープにスネアという針金の輪っかを引っ掛けます。そして取り残しがないように周囲の正常な粘膜をも含むように注意しながら徐々に輪っかを絞り、切除します。10mm未満の非癌病変(主に腺腫)が適応になります。
②内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection:EMR)
EMRもスネアをポリープにかけて、高周波凝固装置という機器で通電して焼き切る治療方法です。安全に焼き切るために、事前に大腸ポリープの下に薬液を注射して病変を持ち上げる処置を行います。20mm以下の病変(癌も対象)が主な対象になります。
③内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection:ESD)
主に20mmを超える病変が対象です(もはやポリープではない病変ということになります)。スネアで一括切除することが難しくなるため、事前処置として、まず取り残しがないように病変の周囲に印を付けます(マーキング)。病変の下に薬液を適時注射して病変を持ち上げ、周囲の切開を行います。適時薬液注射を追加しながら、粘膜下層の剥離を行い病変を切除する方法です。人工的に潰瘍を作るイメージです。
①→②→③の順に、対象となる病変が大きくなり、手技の難易度、合併症のリスクも高くなります。
ポリープを見つけたら、形や大きさ、粘膜の構造などをよく観察します。腺腫性のポリープで、10mm未満であればCSPでの切除対象となります。
スネアで領域を確保しながら把持し、結紮切除します。
切除後の様子です。出血もわずかで、取り残しなく切除できています。状況により、クリップで縫縮することもあります。
このうち、当院で実施しているのはコールドスネアポリペクトミー(Cold Snare Polypectomy:CSP)です。
実際に当院で行った大腸ポリープのCSPの画像です(※わかりやすく説明するため同一症例ではありません)。
そもそも論ですが・・・小さなポリープを取る必要があるのか?
大腸腺腫性ポリープをすべて摘除すること(clean colon を達成すること)により、大腸癌発生を76 - 90%抑制し、死亡率を53%低下させるというNational Polyp Study の報告があり、本邦でもポリープの安全で簡便な治療法であるCold snare polypectomy(CSP)の有用性が報告されています。EMRに代表される高周波凝固装置での通電によるポリープ摘除方法は、出血や穿孔といった偶発症が常に懸念されますが、通電を用いないCSP は熱凝固の影響がないため後出血を来すことが少なく安全性が高いと考えられています。その一方で、熱凝固による組織挫滅の効果が期待できないため、CSP では通電によるポリープ摘除に比べて腫瘍の遺残が懸念されます。よって非癌病変を原則として治療対象とします。